製品コンセプト

KOYAのシーティング


弊社では、以下のようなシーティングに対する考え方を基本に、製品を製作しています。

※説明の中で、学問的なエビデンスが充分ではない内容は「青字」で記載していますので、ご確認ください。

 

まず、弊社の目指すシーティングは「なになに法」「KOYA式」というような、特別なメソッドではありません。健常者(へんな言葉だからあまり使いたくないのですが、ここでは便宜的に「健常者」「障害者」などと書かせて頂きます)から、小児、高齢者までのすべての人が「座る」ためのアプローチで、だれでも理解できる、エビデンス化され、学問的な背景に基づいた方法論のことです。

 

ここで述べる「シーティング」をあえて定義するなら、

「すべての人が、座位姿勢で行うあらゆる活動の実現のために、身体的・目的的・社会的な観点から、その姿勢を最適化するプロセス」とでも言いましょうか……

目的的・社会的、と書いたのは、「目的や使う場所が変われば最適な姿勢は異なる」とか、「好みのデザインや値段とかの背景によっても最適解は変わる」とか、そんな意味です。ただ、ここではそのことを「前提」として、「身体的・心理的適合」について説明をしていきます。

良い姿勢とは?


「良い姿勢」「悪い姿勢」。「良い車椅子」「悪い車椅子」。「良い人」「悪い人」……

ここでは、「良い姿勢」などという、唯一最上の姿勢などというものは存在しない。という理解です。

 

例えば私達は日常的にとる座位姿勢において、ダイニングテーブルで食事をする姿勢と、ソファーでくつろぐ姿勢は異なります。ソファーでラーメンを食べることは困難だし、ダイニングの椅子で長時間テレビを眺めることは苦痛です。そのこと(目的によって適さない姿勢があるということ)は、障害の有無とは関係がありません。

 

身体や心理状態だけでなく、目的や使用環境、さらには社会的な背景さえも姿勢に影響を与えます。「良い姿勢」「悪い姿勢」ではなく、「適した姿勢」「適さない姿勢」と表現します(そのほうが、その座位姿勢の目的が曖昧にならなくて良いですね)。

備考ながら、医学用語の「良肢位」という言葉がありますが、これは仮にその状態で関節が動かなくなっても日常生活に及ぼす影響が比較的少ない四肢の状態があることを示す整形外科的用語ですのでお間違いなく……

 

さて、皆さんがシーティングを行うとき、使用者の座位姿勢を評価するとき、どこを観察して最適姿勢を決めていますか?

例えば「骨盤の傾きや位置」「脊柱のアライメント」「頭部の位置や傾き」など、身体各部分の状態を観察し、目的に合った座位姿勢(構え)を実現できているかを確認していると思います。しかし、その時の身体の状態を作っているのは、必ずしもその時に見えていることだけではありません。障害の状態や生活履歴など、その身体の状態を作っている「背景」というものが存在しています。

 

運動学1)では「姿勢(Posture)」を以下のように説明しています。

「姿勢」=「肢位(体位)」+「構え」

 

①「肢位(Position)」

重力に対する身体の基本面との関係を示す。

立位・座位・側臥位・背臥位・腹臥位・膝立位の6つの姿勢のこと。

 

②「構え(Attitude)」

身体各部の相対的な位置関係を示す。それぞれの肢位の中での異なる姿勢を示します。

例えば、座位の中でも長座位、端座位、あぐら座位など各身体部位の位置関係が異なる状態。「休息座位」「活動座位」というような分類も、基本的にはこの「構え」の違いと理解して良いと思います。

それと、ここではあと1つ。

 

③「各部の状態(Body parts Condition)」を定義します。

具体的には、頭部が屈曲しているとか、脊柱が後弯しているとか、骨盤が後傾している、などのように身体各部がどのような状態であるかを表します。

 

1)基礎運動学:中村隆一 他:医歯薬出版

姿勢を構成するこの3つの要素からシーティングの考え方を理解します。

通常、私達が姿勢の評価をするときに見えているのは、氷山に例えると、水面の上の部分です。「後傾した骨盤」、「後弯した脊柱」、「内転した股関節」などのように、身体の「部分」に注目します。もちろん、これは重要な観察点です。

 

しかし、そのような身体各部の状態というのは、水面下の部分、すなわちその方が24時間の日常の中で取っている肢位や構えの影響によって起こっているという考え方です。例えば、食事のときに1時間座る椅子で股関節の内転に注意するよりも、8時間を過ごしている側臥位において、重力で内転した下肢に注意を払うことの方が大切です。

 

「姿勢の氷山モデル」松野案